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	<title>５枚の世界</title>
	<author>月子</author>
	<isPublic>true</isPublic>
	<spin-off>pass</spin-off>
	<critical_comment>welcome</critical_comment>
	<chapter_count>6</chapter_count>
	<letter_count>8836</letter_count>
	<description><![CDATA[★「５枚以内」のごく短い掌編を集めてみました。「TexpoCafe賞」をいただいた「ファミレス午前５時」もここに収めてあります。この枚数はネットでも気軽に楽しめる枚数だと思います。少しずつ増やしていければと考えています。]]></description>
	<updated>2010-03-14T16:05:32+09:00</updated>
	<published>2010-03-13T19:16:24+09:00</published>
	<cover_image>http://texpo.jp/texpo_book/cover_image/4475</cover_image>
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<content>

	<chapter id="31404" seq_num="1" title="ファミレス午前５時" letter_count="1811" updated="2010-03-13T19:42:31+09:00" published="2010-03-13T19:04:14+09:00">
		<section><![CDATA[ファミレス午前５時

　24時間営業のファミレス。午前５時。客はまばら。辺りはまだ暗い。
　――いきなり三人の男が入ってきた。
「いらっしゃいませー」ウエイトレスの葉山理香は反射的に頭のテッペンから抜けるような自慢のアニメ声で男たちを迎えた。が、次の瞬間思わずギョッとして息を飲んだ。三人の男の内、二人は見るからに『指が何本かないかも知れない』業界の人に見えた。左の男はパンチパーマで紺の縦縞のダブルスーツに『ぶっとくて派手じゃなきゃネクタイって呼ばねえだろ』的なネクタイを締め、右の男は坊主頭にサングラス、白のダブルスーツに身を包み、黒いシルクのシャツは第三ボタンまで外され胸元には『どう見たってカタギじゃねえだろまいったかゴルァ』的な金のキヘイ・ネックレスをちらつかせていた。
「あ、お煙草はお吸いになりますかぁー」理香が心なしか震えた声で訊く。「吸うよ」と坊主頭が野太い声で短く答えた。二人の男は一人の男を両側から抱えるようにして立っている。二人に支えられた真ん中の男はごく普通の中年男に見えるが、泥酔しているのかぐったりとしている。着ているスーツも履いている靴も明らかに高そうだ。
「ではこちらのお席にどうぞー」理香は窓際のゆったりとしたテーブル席に三人を案内した。真ん中の男は足元もおぼつかない様子で二人に抱えられ、引き摺られるようにして席にへたり込んだ。「大丈夫ですか？」と訊くのも大きなお世話のような気がした。
（イヤだなー、吐かれちゃったりしたら困るのよねー）
　理香は心の中で呟いた。
　午前５時という時間帯は、夜通し飲みつづけていた連中が泥酔して訪れることも少なくない。
　メニューと水とおしぼりをテーブルに置くと、間髪を入れずに「コーヒーふたつ」とパンチパーマがぼそりと言い、理香に投げるようにしてメニューを返した。近くで見る二人は典型的なコワモテで目つきも悪く、どこからどう見ても『組の人』に見えた。もちろん二年三組とか桜組とかリス組などではない。
　理香がオーダーをとってカウンター近くのレジまで歩くと、もう一人のウエイトレス・西野良恵がやさしい笑顔で目くばせした。彼女は理香よりも少し年上だ。（大丈夫、何も心配はいらないわ）と、良恵は理香に目で話しかけた。それを察した理香も無言で頷き、軽く笑顔を返した。あうんの呼吸というヤツだ。
　三人のうち、酔った男は柱の角に顔を押し付けるような恰好でぐったりとしている。パンチパーマと坊主頭は無言のままコーヒーをすすり、ときどき互いにケータイを取り出してはどこかに電話をし、つづいてボソボソと短く会話した。ケータイはご遠慮ください、と言いたいところだったが、店内も空いていたし店長も不在だったので理香は見て見ぬふりをすることにした。
　二人はコーヒーを二度おかわりしたが、泥酔しているらしい三人目の中年男は相変わらず柱にだらしなく頬を擦りつけ、爆睡している。二人はコーヒーをすすり、ケータイをかけ、ボソボソと短い会話を交わす、コーヒーをすすり、ケータイをかけ、ボソボソと短い会話を交わす……。そんなことを繰り返しながら時間は過ぎていった。理香は何気なく遠目にそんな様子を見るともなしに見ていた。
　時計が７時をまわり、朝の客がちらほらと増えてきたあたりで三人はようやく席を立った。相変わらず中年の男はぐったりとしている。心なしか入って来たときよりも顔が青白い。二人が両脇からしっかりと支えなければピクリとも動けない様子だった。レジには良恵が立っている。三人が勘定を済ますと、入口付近に待ち構えたように黒塗りの大きなセダンが横付けされた。おそらく電話して仲間に迎えに来てもらったのだろう。
「ありがとう、ござ、いました」良恵が勘定を済ませた三人を送り出した。
　黒塗りのセダンがすごい勢いで道路に飛び出して行った。
　その様子が妙にぎこちなく見えたので、理香は不思議に思って良恵に歩み寄った。
「どうかしましたか？」理香が良恵に訊いた。
「き、聞こえちゃったのよ……」良恵の口元がわなわなと震えている。
「何がです？」
「埋　め　る　と　こ　ろ　が　見　つ　か　っ　て　良かったな、って」
「ひょっとしてあの真ん中の人……」

「みたい、よ」

「みたい、ですか……」

「みたい」


了
]]></section>

	</chapter>

	<chapter id="31405" seq_num="2" title="雪だるまな中国人" letter_count="1181" updated="2010-03-13T19:14:27+09:00" published="2010-03-13T19:06:50+09:00">
		<section><![CDATA[雪だるまな中国人　※２ちゃんねる創作文芸板「雪だるま祭り」参加作品。



　わたし中国人ね。意識失ってたね。目が覚ましたら雪だるまなってたね。そう、雪だるまね。
　わたしチャイニーズ・マフィアね。中国のヤクザね。でも下っ端の下っ端よ。キンピラね。いや、チンピラね。あらら日本語難しいよ。日本に来てまだ１年くらいね。
　わたし今ビルとビルのすき間のどじ裏にいるね。どじ裏で頭から血液が流れてるね。シャツも真っ赤ね。腕とかも真っ赤ね。もうすぐ夜が明けるね。でも動けないね。
　わたし雪だるまね。夜にヤクザ抗争あったよ。ほかの組織と喧嘩ね。ひどがったよ。わたししこたま殴られたね。殺されるかとおもたよ。ホゴホゴにされたよ。歯が折れてるよ。アラバ骨も何本か折れてる思うよ。
　頭がぼーっとしてるね。血液がそこら中からダラダラ流れてるよ。からだ中が痛いね。でもどこが痛いのかもわかんないね。わかんない。なんか痺れてるみたいな感じね。全身ね。感覚ないよ。
　とにかくわたし雪だるまね。動けないよ。寒いね。もうすぐ死ぬがわからんね。生きれればいいね。わからんね。日本に来ればいいことあるとおもたよ。だけどなんもないよ。なかたよ。寒いね。寒いよ。わたし死ぬよたぶん。全身雪だるまだしね。一歩もいごけないよ、血液まみれだし。しょんべんも漏らしてるみたしね。マタのとこ冷たいよ。
　……あ、わたし、まちがってたね。気がついたね。日本語難しいね。「雪だるま」じゃなくて、「血だるま」のまちがいよ。はははは。わたし血だるまね。それ言いたかたよ。血だるまだってことね。はははは、雪だるまじゃないね。はははは。笑っちゃうね。寒いね。寒いよ。雪だるまは白だし、血だるまは赤だよ。
　空が青黒くなてきたよ。いきなり雪が降ったきたよ。すごい雪だね。ビルとビルのすき間から白くて冷たいのがいっぱい落ちてくるね。雪ね。いきなりだね。久しぶりに雪見たよ。わたし中国の奥の方で生まれたよ。すごい田舎ね。何もないよ。仕事もないよ。それから上海に出たね。それからマフィア入って、日本来たよ。
　ふるさとは日本より寒いね。よく雪降ったよ。子供の頃は楽しかったよ。貧乏だたけどね。でも子供の頃は楽しかたよ。友だちもたくさんいたよ。雪降たらみんなで雪だるま作たよ。血だるまじゃないよ。はははは。血だるま嫌いね。血だるま嫌い。はははは。雪だるまだよ。わたし生きれるかな。生きれたら中国帰りたいよ。
　……ああ、雪がすごいね。すごい降てるよ。きらきらしてるよ。冷たいよ。まわりが白くなてきたね。ふるさと帰りたいよ。お母さんと兄ちゃんいるよ。できればお金持て帰りたいよ。子供の頃に帰りたいよ。わたし生きれるかな。雪だるま作って遊びたいよ。わたし生きれるかな。夜が明けるよ。



了
]]></section>

	</chapter>

	<chapter id="31406" seq_num="3" title="雪だるま教" letter_count="1720" updated="2010-03-13T19:15:04+09:00" published="2010-03-13T19:08:46+09:00">
		<section><![CDATA[雪だるま教　※２ちゃんねる創作文芸板「雪だるま祭り」参加作品。


　どうやら私のあずかり知らぬところで『雪だるま教』なる怪しげな宗教が、世界中に深く静かに浸透しているらしい。そのことを初めて知ったのは高校時代からの友人で、今は大学で宗教学を教えている佐々木からだった。私と彼はいわゆる壮年を迎え、人生の折り返し点をとうに過ぎようとしていた。
　それは彼と行きつけのバーで軽くスコッチを飲んでいたときの話だ。
「発祥はアメリカのコロラド州らしいんだよ。あそこはよく雪の降る地域だ。向こうではスノーマンズ・チャーチと呼ばれている。教祖はジョージ・スコット・スノーマンという男で、信者は氷でできたスノーマン＝雪だるまの小さな像をご本尊にしているらしい」
「ほお？　そんな話は初めて聞いたよ」 私はウイスキーグラスの氷をカラカラともて遊びながら言った。
「そりゃそうさ。この話は絶対秘密にしといてくれよ。宗教学関係者の間でもタブーになってるんだ。あまりあからさまにすると何が起こるかわかったもんじゃない。なにやらフリーメーソン並みの秘密組織らしいんだ」
「で、そいつはどんな宗教なんだ？」
「ああ、雪の神を信奉する宗教でね、入信するとまず女性は雪のように白くてキメ細かな肌になるらしい。スノーマンてくらいだからな。それと難病が治り、健康体を取り戻すということだ」
「はあぁ？　なんだそりゃあ？　美容と健康の宗教ってことか？」 私は苦笑した。
「笑いごとじゃないさ。現世利益を約束する宗教は必ず成長するものなんだよ。まして女性を取り込んだ宗教は強い。それと、雪だるま教に入信すると幸運が次々と舞い込むということらしいんだな」
「雪だるま式に借金が増える、というのは聞いたことがあるが、雪だるま式に幸運、とはね」 私はスコッチをおかわりした。
「まったく知られていないのに、世界中に相当数の信者がいるらしい。どうやって入信するのかもわからないし、組織の全貌も見えない。なんというか不気味な宗教なんだよ」佐々木は私の言葉を無視するように真顔で答えた。
「これは噂レベルの話なんだが……」 佐々木はそこで声をひそめた。「雪だるま教の信者たちは女性が圧倒的に多く、冷蔵庫の冷凍室にご本尊の雪だるま像を隠しているらしい。冷蔵庫の管理は大抵主婦の役目だからな。彼女たちは冷蔵庫を開けるたびにその像に祈りを捧げているというわけだ。で、もしも未信者がその像を見つけてしまったら大変なことになる……」
　佐々木はそこでウイスキーグラスをあおった。
「大変なことになるって？　どうなっちまうんだ？」 私は身を乗り出して訊いた。
「殺されちまうんだとさ。未信者は像を見てはいけないらしいんだよ」
「なんだかなあ、都市伝説みたいな話だな」
「まあ、噂レベルの話だよ」　佐々木が笑った。

　……とはいえ、その話を聞いてから私はいささか不安になった。このところ妻の肌が“美白”になったような気がしてしょうがないのだ。そう、気のせいかも知れない。けれど、もしかすると妻は雪だるま教の信者なのかも知れない。そんな妄想が頭から離れなくなってしまった。
　ある夜、妻が寝入ってから、私は思い切って冷蔵庫を開けてみた。冷凍室の霜のついた食材をかき分けると、木造りの頑丈そうな箱が見えた。おそるおそるそれを開けると、ああ、やはり！　そこには白い小さな雪だるま像が見つかった。私は愕然とした。妻はやはり雪だるま教の信者だったのだ！　そのとき、背後に人の近づく気配がした。妻だ。子供たちはとうに独立している。家には妻しかいない。
「見　て　し　ま　っ　た　の　ね」
　能面のように無表情な妻が、右手にナイフを握りしめている。

「雪だるまの形したアイスケーキ、可愛いでしょ。明日食べようと思ったんだけど、夜食に味見する？」

　妻は小首を傾げてにっこりと笑った。
　私はそこで妻に悟られないよう、努めて平静を装って言った。

「い、いや、明日にしよう。ありがとう」

　膝がガクガクと小刻みに震えていた。



了
]]></section>

	</chapter>

	<chapter id="31407" seq_num="4" title="豪田家の雪だるま" letter_count="1676" updated="2010-03-13T19:15:31+09:00" published="2010-03-13T19:09:50+09:00">
		<section><![CDATA[豪田家の雪だるま　※２ちゃんねる創作文芸板「雪だるま祭り」参加作品。


「わー、雪だあ」「すごーい」「きれいねー」「真っ白だー」
　前日から降りつづいていた雪は目に映る景色を一面の銀世界に変えていた。何もかもが白い。真っ白だ。街中に白いお化粧を施したような美しい雪景色だった。普段はあまり雪が降らないその地方も、20年振りの大雪だとテレビのニュースが興奮気味に伝えていた。
「おーし、みんなで雪だるま作るぞー」
　豪田家の主、豪田武は野太い声で言った。「わーい」「やったー」「作ろう作ろう」子供たちのはしゃぐ声が響く。豪田家は四男六女、なんと十二人の大家族だ。あとニ～三人増えればテレビでよくある大家族のドキュメンタリーにでも出られそうな勢いである。
「じゃあみんな、あったかい格好して、長靴はいてねー、手袋も忘れないでねー」
　母親の美智子がにこやかに子供たちに笑いかける。そうして豪田家の十二人はさっそく近くの公園へと向かった。公園ではすでに近所の子供たちが集まり、雪遊びでにぎわっていた。
「よーしみんな、一人、ひとつずつ、雪だるま作ってみようかー」
　武が号令をかける。子供たちはそれが合図でもあるかのように、思いおもいの雪だるまを作り始めた。子供たち、といっても長男と長女はすでに社会人だし、次男と次女は高校生。一番下の五女はまだ三歳である。歳上の兄弟たちも童心に帰り、下の兄弟たちのめんどうを見ながら雪だるまづくりを楽しんでいる。美智子が家から持ってきたキュウリ、ニンジン、ナスといった野菜の切れ端が、ちょうどいい具合いに雪だるまの目と鼻と口に化けている。上の兄弟たちも下の兄弟たちも、それぞれにわいわいキャッキャいいながら雪だるまづくりに夢中になっている。武と美智子は公園のベンチに座り、おだやかな笑顔を浮かべながら子供たちを見つめている。武がふと美智子の手を握る。仲のいい夫婦だ。いや、仲がいいからこそ、こんなに子供もたくさん……以下、略。
「おーし、みんな出来たかぁー。一人、ひとつずつ、作ったかぁー」
　大小の雪だるまが完成した頃を見計らって武が声をかける。
「それじゃ、記念写真撮るぞー」
　武は家から持ってきたデジカメを三脚に立て、セルフタイマーをセットする。カメラと三脚は長男と長女が武の誕生日にプレゼントしてくれたものだ。
「はーい、並んでならんでー」と、美智子が雪だるまの前に子供たちを集める。カメラのセルフタイマーが“シャキッ”といういい音を立てた。

「あら？」

　無事に記念写真を撮ったあとに、美智子が怪訝な顔をした。
「雪だるま、11あるわね？　だれかふたつ作ったの？」
　すると子供たちは顔を見合わせながら笑った。
「おかあさん、お腹の中に11人目の弟か妹が入ってるじゃない。だから11でいいのよ」と、長女が言った。
「隠しててもダメだよ。狭い家なんだから、おとうさんとおかあさんが話してたら誰かしらが聞いてるもんんだよ」と、長男。
「そ、そうか、隠してたわけじゃないんだけどな。あとでお前たちにもに知らせようと思ってたんだ」と、父の武。
　美智子は一瞬、唇を噛んで真顔になった。そして次の瞬間、再びおだやかな笑顔にかえった。
「おーし、記念写真も撮ったし、そろそろ帰るかー」
　父の号令で十二人は白い雪をザクザクと小気味いい音をたてながら家路へと向かった。

「豪田家だぞーGo Go Go」「Go Go Go　みんな仲良し」「進め進め豪田家Go Go」「Go Go　豪田家ばんばんざい♪」

　意味もない言葉に調子っぱずれの奇妙なメロディーを付けながら、子供たちはにこにこしながら満足げに雪を踏みしめている。武がやさしく美智子の手を握り、その目を見つめる。そして子供たちに気づかれないように「うん」と小さく頷いた。

　……迷いは消えた。やっと決心がついた。美智子は「11人目も絶対産むわ」と心の中で宣言した。



了
]]></section>

	</chapter>

	<chapter id="31409" seq_num="5" title="だからマイクは固定しろと" letter_count="973" updated="2010-03-13T19:33:48+09:00" published="2010-03-13T19:33:00+09:00">
		<section><![CDATA[だからマイクは固定しろと

ホワイトハウスで記者会見を始めようとしていた大統領が、ふとよろけた拍子に演台のマイクを倒してしまった。
最前列の記者はそれをよけようとしてまわりの記者にぶつかり、記者たちは次々と将棋倒しとなった。
一番後ろにいたカメラマンはぶつかった拍子に廊下に飛び出し、
今度は廊下を歩いていたホワイトハウスのスタッフとぶつかった。
スタッフはよろけながら階段を転げ落ち、階段下にいた警備員にぶつかった。
警備員はぶつかった拍子に思わず『緊急消防通報ボタン』を押してしまった。
ホワイトハウスからの警報に驚いた消防は大急ぎで消防車を走らせた。が、あわてていたため交通事故を起こして横転した。
横転した消防車に今度は大型タンクローリーが突っ込んだ。たちまちあたりは火の海となった。
飛び火した火は付近にあった精神病院に燃え移り、入院していた患者たちが次々に脱走した。
患者たちの一部はゲラゲラ笑いながら木材の切れっ端に火をつけてたいまつにし、街中を走り回った。
たいまつの火があちこちで投げられ、そのうちのひとつが刑務所に飛び火した。
刑務所が燃え囚人たちが脱走した。駆けつけた警官と囚人がぶつかり、街中が大暴動と化した。
警察官から拳銃を奪った凶悪犯があたりかまわず銃をぶっ放した。
レイプ犯はここぞとばかり若い女を見つけては犯しまくった。
その様子を空から取材していたヘリコプターが２機、墜落した。
１機はたまたま旧ソ連の某国の大使館に、１機は中東の某国の大使館に堕ちた。ふたつの大使館は跡形もなく燃え尽きた。
怒った旧ソ連の某国と中東の某国は脅しに小型ミサイルをぶっ放した。
ワシントンDC全域がすざまじい勢いで火の海と化した。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

およそ１ヵ月後、大惨事はやっと収束に向かい、大統領が再びホワイトハウスで記者会見をした。

「みなさん、この悲惨な大事故が私たちに与えてくれた教訓は……」大統領は沈痛な声で話し始めた。

「演台のマイクは、必ず固定しておくように、ということです……」




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 了
]]></section>

	</chapter>

	<chapter id="31452" seq_num="6" title="小説を書く私" letter_count="1475" updated="2010-03-14T16:05:30+09:00" published="2010-03-14T16:01:08+09:00">
		<section><![CDATA[小説を書く私

何を深呼吸なんかしちゃってるのよ。私は今、小説を書こうとしている。が、この小説には主人公というものがいない。ワインでも飲もっかなー。なぜ主人公がいないかと言うと私はこの小説の作者であり、私が「この小説には主人公はいない」、と宣言したのだから、主人公などいるはずもないのである。作者が「主人公はいない」と言っているのに「いや、いるはずだ」などとイチャモンをつける読者などもいるはずもない。いやいたりするのだがいないことにする。あのさーもっとやさしく言ってくれないかな？　が、ときどき、そのような意図で書いたわけではないのに、いや、その意図自体が問題だ、などという読者もいるにはいるのだが、まあどうでもいい。私は今、パソコンに向かっている。パソコンに向かい、小説を書こうとはしているのだが、さっきからコーヒーを飲み、煙草をつづけざまに吸いつつも、一行も書くことができない。だから後でちゃんとやっとくって言ってんじゃない。……ここで作者は突然、気が変わった。飲んでいるのはワインじゃなかったのか？　作者自身が「気が変わった」と言っているのだからまちがいない、気が変わったのだ。どうでもいいんだな。いいえワインよ。私、作者は、今、パソコンに向かって小説を書こうとしている男、を、主人公にすることに決めた。人称は一人称とする。つまり、これから「私」として語られる内容は作者である私が創作した主人公としての私、という人称とキャラクターである。そういうわけで、私はパソコンに向かって小説を書こうとしている。私は脚を組み直し、何本目かの煙草に火をつけると、ディスプレイに浮かぶワードのフォーマットを睨む。そうだ、主人公は女にしよう、と私は思いたった。やっぱりワインでも飲もっかなー。女は女子大生だ。女の名は美紀という。美紀は小説家志望で、インターネットの投稿サイトにときどき自作をアップしたりしている。人称は一人称としよう。つまり、これから「私」として語られる内容は作者である私が創作した主人公としての私、という人称とキャラクターである。これから先の話は私＝美紀が、主人公である「私」という人称とキャラクターによって語られていくのである。私は今、小説を書こうとしている。が、この小説には主人公というものがいない、というアイディアのもと、美紀は「私」という主人公によって、物語を始めようとしている。この小説には主人公というものがいない。なぜなら私はこの小説の作者であり、私が「この小説には主人公はいない」、と宣言したのだから、主人公はいるはずもないのである。作者が「主人公はいない」と言っているのに「いや、いるはずだ」などとイチャモンをつける読者などもいるはずもない。私は今、パソコンに向かっている。パソコンに向かい、小説を書こうとはしているのだが、いろんなことがよくわからなくなってきた。けっこう面白いかも。少し酔ったみたい。私は今、小説を書こうとしている。なんか見たことある風景だなあ。まあ人生なんて同じことの繰り返しさ。それってどこかで聞いたことのあるセリフじゃん。太陽のまわりを文句も言わず延々と回っている地球クンはエラいよなあ。だから、なんか見たことある風景だなあ。文句言うなよ。ああ、わかった。私は今、小説を書こうとしている。文句言うなよ。ああ、わかった。わかったってば。ワイン飲んでいいから。ああ、わかった。わかったってば。
…………
……
……
……
……
……
……
……
……
……





了
]]></section>

	</chapter>

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