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タイトル 人生はロックだぜ! (Dr.サトール)
回想、私が愛したウルトラセブン
みなさんこんにちは、Dr.サトール です。

今回はウルトラシリーズの中でも評判のヒット作「ウルトラセブン」の制作現場を
スタッフや俳優の目線で捉えて1993年にNHKで放映されたスペシャルドラマ
「私が愛したウルトラセブン」についてお話したいと思います。
前回、円谷プロのメインライターとして活躍した金城哲夫(きんじょうてつお)さんに
ついてお話させて頂きましたが、今回は数あるウルトラシリーズの中でも最高傑作
との呼び声が高いウルトラセブンについて金城さんを始めとした若いクリエーター
達がどのように関わっていたのかを描いたドラマです。内容は当時の様子にフィク
ションを織り交ぜた彼らの青春群像劇になっていて原作は金城さん達と共にウル
トラセブンの脚本を担当した市川森一(いちかわしんいち)さん、物語はセブンという
新番組のニューヒロイン、ウルトラ警備隊のアンヌ隊員(菱見百合子・ひしみゆりこ、
現ひし美ゆり子さん)が新たにキャスティングされるところから始まります。

時代は昭和42年(1967年)アメリカは人類初の月面着陸を目指したアポロ計画
の仕上げに入っており最新科学への期待が膨らむ一方、日本では未だに沖縄が
アメリカの支配下にあって空軍基地からは大型爆撃機が泥沼と化したベトナムの
戦場に飛び立っていました。「ウルトラQ」「ウルトラマン」という大ヒット番組を世に
送り出して日本の特撮ドラマ界の雄となっていた円谷プロの期待の次回作「ウルト
ラセブン」の撮影がいよいよクランクインして明日はマスコミへの制作発表という日
に主演のアンヌ隊員役の女優がシナリオ作家を自分の車に乗せたまま事故を起こ
します!不幸なことに作家は死亡し女優も重症で急遽アンヌ役を探さねばならなく
なった金城さん(佐野史郎 ・さのしろうさん)や満田(みつた)監督(塩見三省 ・
しおみさんせいさん)は代役を手配しますが、これといった女優が見つかりません。
夜になって、満田監督は偶然目に留まった学生アルバイトのゆり子(田村英里子・
たむらえりこさん)に引き付けられ他の候補を独断で断って金城さん達のところに
引っ張っていきます。

このドラマの設定では、ひし美さんは体育大学の1年生でピット星人(セブン第3話
に登場する侵略宇宙人)のスーツアクター(着ぐるみの中に入って演技する俳優)
としてアルバイト参加しているのですが、実際は既に女優としてキャスティングされ
ており先にアンヌ役に決まっていた女優が別の劇場映画出演となったために急遽
決定されたということです(おかげで、ウルトラ警備隊の制服のサイズがキツめと
なってひし美さんご本人は腰がくびれて見えて良かったと言われていますが・笑)
ともかくも、台詞など言ったこともないゆり子は台本を握り締めNGを連発しながらも
必死にアンヌという役にのめり込んでいきます。一方、このドラマの主人公、セブン
=ダン隊員(松村雄基 ・まつむらゆうきさん)は前日からソワソワと落ち着きがありま
せん。実は彼は付き合っていたシャンソン歌手の直子(なおこ、日向薫 ・ひゅうが
かおるさん)と結婚の約束をしており、この日いっしょに婚姻届を提出する予定だっ
たのです!しかし、朝からアンヌの件があって撮影は遅れに遅れ、とうとう彼女との
連絡が付かないうちに17:00を回ってしまい区役所の前に駆けつけた時には既に
彼女の姿はありませんでした。売れない新人時代から面倒を見てもらい、やっと
主役の座が巡って来て彼女と幸せになれると思った矢先に運命は二人を引き離
したのです。

こういう時に携帯があればと思うのは現代の感覚で、当時はもちろん公衆電話!
(1枚ずつ10円玉を入れるやつです・笑、まだテレホンカードすらありませんでした)
で各家庭に漸く電話が普及したくらいの時期です。こういう時に約束の場所に現れ
ない恋人について男女共にいろいろと憶測をするものなのですね。直子さんはダン
が水商売!(みずしょうばい=料理屋、バーなどの接客業で客の人気で収入が動く
不安定な仕事。日本では芸能人も立派な?水商売と見なされておりますが・笑)
の自分を結局は選ばなかった、自分の方から身を引くべきだという決断をしてしま
います。自分がそばにいるとダンの今後に悪い影響が出ると。また、ダンも直子
さんが一旦そういう決断をしたらもう取り返しがつかないと、それ以上彼女を追い
かけることを止めてしまいます。これは直子さんの性格もあるし、ダンの性格(意地
というか、やせ我慢というか、一旦自分の下を去った女性を追いかけられないという
今の男性には非常に珍しくなった!タイプがまだこの頃には大勢いたのですね・笑
まあ、男の側の情けなさです。男女を問わずコミュニケーションはよく取りましょう)
もあって結局二人はそれっきりとなります。こういうのを縁が無かったと言うのでしょ
うか?

肩を落として撮影所に戻って来たダン、そこには嵐の中を強行軍(きょうこうぐん)
で撮影を続ける満田監督やアンヌ達の姿がありました。ダンは気持ちを吹っ切って
セブンの世界に専念することを誓います。その頃、企画室では次回作の脚本が行き
詰まっていました。何と事故で死亡した作家がシナリオを半分しか書いていなかった
ので急遽テレビ局からやって来たライターの石川新一(いしかわしんいち、香川照之
かがわてるゆきさん、市川森一さんがモデル)が残りを書くことになり、他方円谷側も
金城さんの部下の上原正三(うえはらしょうぞう、仲村トオルさん)が自身のオリジナル
作品の「300年間の復讐」を脚本化することになりました。奇しくも二人の新鋭作家が
徹夜で競い合うことになったのです。
石川さんが引き継いだ「他人の星」は実際に市川森一作品「盗まれたウルトラアイ」と
して放映され中々の名作という評価を受けています。地球という狂った星!をこの宇宙
から抹殺するためにマゼラン星から送り込まれた工作員のマヤはダンからウルトラアイ
(ダンがセブンに変身するために使うゴーグル型のアイテム、要するにこれが無いと
ダンはセブンになれない訳でダンの弱点でもあり敵の宇宙人によく狙われます・笑)を
奪って母星に迎えをよこすように連絡するのですが、やって来たのは地球破壊のための
ミサイル!でした。マヤもまた自分の星から裏切られたのです、全てを悟ったマヤはダン
にウルトラアイを返します。セブンに変身したダンはミサイルを破壊して戻って来ますが、
既にマヤは煙と共に消滅していました。ダンはマヤを救ってやれなかった自分に悄然と
します、同じ宇宙人として自分ならマヤを理解してやれたはずなのにと。宇宙人としての
セブンは孤独ですね、遠い星からただ一人やって来た地球で平和を守る為に戦う彼は
その意味をどう考えていたのでしょうか?

また上原さんが温めていた「300年間の復讐」は日の目を見ることはありませんでした。
これは遠い昔に地球にやって来た異星人の一族が地球人から迫害されて最後に残った
一人が復讐に立ち上がるという過去の琉球と日本の関係を思い起こさせる内容でした。
上原さんはどうしても日本に侵略された琉球の歴史を払拭出来ないでいた訳ですね、
ドラマでは一旦出した脚本を自ら引っ込めた後で金城さんに向かって「この脚本(ほん)
は沖縄の人間にしか分からない、これは金ちゃんに読んでもらうために書いたんだ。
金ちゃんが何かを感じてくれればそれで良い」と言うのでした。二人の沖縄人はその後
各々の道を進むことになるのですが、それは自らが向き合った二つの祖国に対する答
の出し方の違いだったのかも知れませんね。
翌日、マスコミ各社を集めた制作発表が行われテレビドラマ「ウルトラセブン」が颯爽と
始動しました!その後行われた初号試写(しょごうししゃ=作品の上がり・出来上がり具合
をスタッフが確認するための映写会で初号試写はほぼ完成段階で行われるのですが、
神様!円谷英二・つぶらやえいじさんはこの段階でもリメイク=撮影のやり直しを命じること
がしばしばあったということです!妥協を許さない真のプロの姿勢ですね。因みに、かの
スタジオジブリにも同様の強権!を発する鬼がいるということです・笑)でアンヌは自分や
仲間達が作り上げたこの素晴らしいドラマの出来栄えを改めて実感するのでした。

快調にスタートを切ったウルトラセブンでしたがシリーズも後半に入ると視聴率では徐々
に苦戦していきます(全49話で前半は30%前後をキープしていましたが第36話以降は
16~23%を往き来するようになりました)膨大な制作費を節約するために怪獣の着ぐるみ
も使い回してロケも新たにタイアップ(ロケ先のホテルなどの宣伝をする代わりに制作に
協力してもらうなどの契約)を取るなど現場スタッフも苦労の連続でした。これは金城さん
や上原さん達の脚本が徐々にSF色を増していったのが怪獣路線を期待する子供層から
敬遠されたと言えるかも知れませんが、逆にそれが後のセブンの評価をアップすることに
繋がるので複雑な気持ちになりますね。ウルトラQ、ウルトラマンを経て脚本家達が内容
を掘り下げたドラマを書こうとする傾向が強まるのは自然なことだと思うのですが、テレビ
局側はそうも言っていられない訳で数字の低下は制作サイドへの突き上げとなっていき
ます。責任者の金城さんはドラマのクオリティと視聴率の板ばさみで心労が増していった
のではないでしょうか。

一方、俳優達もそんな流れは感じ取っていたようでセブンも段々と終了モードに入って
いきます。ダン達は次の番組の予定などを話題にするようになっていくのですがアンヌは
セブンの世界を抜け出せないでいるようです、初めて飛び込んだドラマの世界で永遠の
夢を見続けていくのかと思っていた自分が少しずつ現実に引き戻されていくのが彼女自
身、ある種の割り切れなさや恐ろしさを感じるようになっていたのかも知れません。祭りが
終わりに近づいていく寂しさはみなさんも感じた経験があるでしょうか、その時浮んでくる
のは「夢よ覚めないで」というせつない思いですね。
今や立派な?酒豪になってしまったアンヌが仲間達と繰り出した新宿で偶然、以前ダンが
つき合っていた直子さんの勤めるシャンソンバー「ミラボー」を見つけてフラフラと入って行
きます。お店では直子さんが華麗にシャンソンを歌いながら酔っ払いの?アンヌをエスコー
トしてきたソガ隊員(布川敏和 ・ふかわとしかずさん、シブがき隊のフックン!)に話しかけ
ます(因みに、直子さんはミラボーのママだったのですね!)そこでセブンが間もなく終了
すること、最終回は仙台ロケになることを知って不意にダンと会いたいと言い出します。彼
に伝えたいことがあると。その時のアンヌの焦りようは普通ではありませんでしたね(笑)
どうも彼女は劇中そのままにダンに惹かれているようです、そんな思いを知ってか知らず
か直子さんはダンへの伝言を言付けるのでした(この場面の前にアンヌは本物のアンヌ!
このドラマに路上で詩集を売る女性の役で出演したひし美ゆり子さんと出会います、こう
いう新旧アンヌの共演という演出はウルトラファンとしては嬉しかったですね)

翌日、デパートのサイン会場でアンヌはダンに直子さんの話を切り出します(笑)が、ダン
は彼女に会うつもりは無いときっぱり断ります、既にダンの中では過去の人になっている
ようですね。しかし、そうなるとアンヌは逆に待ち合わせへは行くように急かします。この辺
は微妙な女性心理でしょうか?ダンの反応に安心しながらも彼女から自分が邪魔をしたと
思われたくはないというところなのか結局アンヌは約束の喫茶店に自分で出かけて行き
ダンが来ないことだけ言おうとするのでしたが、これもまた直子さんの代理でやって来た
坂井(別所哲也 ・べっしょてつや)さんにいっしょにミラボーに来るように言われます。何か
訳有りだと察したアンヌはミラボーに向かうのですが、そこに待っていたのは直子さんと
もう一人、まだ若い少年のようなアメリカ兵!のマイケル(ライアン・パージェスさん)でした。
何が何だか理解出来ない彼女に坂井さんが説明します、マイケルは脱走兵で自分達は
彼のような人間を日本から第三国(だいさんごく=紛争等の当事国と直接の関係が無い国)
へ脱出させる組織のメンバーだと。そうでした、この頃アメリカはベトナム戦争の真っ最中で
多くのアメリカ兵が戦場で命を落としていました。当然、脱走兵の問題もありましたしアメリカ
本国で兵役を拒否して逮捕される若者も多くいました。アメリカの世論は長引く戦争に嫌気が
さして既に反戦の方向に傾いていました。日本でも反戦団体が活動していましたがこの様な
闇のルートがあったかどうかは定かではありません。

とにかく、仙台の近くの「ゆめのうら」という港からソ連のナホトカを経由してスエーデンへ入る
ルートが出来ており、マイケルをセブンの仙台ロケに潜り込ませて連れて行って欲しいという
希望でした。アンヌは自分のアパートへマイケルをかくまってダンのアパートへ向かいます。
高倉健の映画を観てご機嫌で!アパートに戻ってきたダンは待っていたアンヌから事情を聞
いて仰天します。当時の日本人、そう、ダンのような普通の?一般人には遠いベトナムで殺し
合いが続いていてもそれは自分の問題ではないのですね、これは現在の私達も同様です。
今も世界では戦争が続いており沢山の人達(もちろん一般市民を含みます)が亡くなっている
のですが、それが日常的な話題になることはありませんね。結局、マイケルをミラボーへ戻す
と言うダンにそれなら自分が面倒見るとアンヌが言い出したので困ったダンはセブンの役者
(スーツアクター)の竜次(りゅうじ、梨本謙次郎・なしもとけんじろう さん)の所へ彼を連れて
行きここから三人共犯?のマイケル脱出プロジェクト!が始まったのです(笑)それからは、
アンヌは仙台ロケが何時になるかが気になって仕方がありません、満田監督や制作担当の
熊谷(くまがい、中島陽典・なかじまようてん)さん達を捉まえて予定を尋ねますが金城さんが
最終回の脚本を書き上げないことには話が進まないと聞くと直接企画室に乗り込みます!

一方、普段企画室などに顔を出さないアンヌの訪問を受けた金城さんは上機嫌で麦茶を
勧めながら差し入れのキャンディを頬張ります。自分とダンの今後を気にするアンヌに金城
さんはセブンが正体を明かして故郷へ帰ることを告げますがアンヌは不満気に「ダンがアン
ヌを愛しているのならそれを貫くべきだ、アンヌを残して帰ってしまうのは自分自身を偽ること
になる」と返します。こういうところは女性は鋭いですね(笑)ものごとの本質を突いています。
男は色々と世の中のしがらみを考えて行動出来ずにいるのですがズバッと決断を迫ります!
金城さんはおもむろに話し出します「僕はヤマトンチュ(日本人)じゃない、昔、薩摩藩に侵略
されて無理やり日本人にさせられた琉球人の末裔(まつえい)なんだ」と告白!するのでした。
何故琉球のことを、と首を傾げる彼女に金城さんは「自分の中にはまだ失われたはずの王国
の血が脈打っている、琉球人は決して日本人にはなれない」と宣言?しますがアンヌは「琉球
人だろうとヤマトンチュだろうと金城さんは金城さんに変わりない」と一刀両断(いっとうりょうだ
ん=一発で真っ二つに斬り捨てる!)にします(笑)これには金城さんも降参で一気に脚本を
書き上げてしまいました(笑)ここはセブンの中でも最高の名場面と言われる最終回のダンと
アンヌの別れのシーンからの演出ですが、セブンがはっきりと地球との別れを決断した瞬間
ですね。

基本的にヒーローが現れる(必要とされる)状況とは通常の方法ではどうしようもなくなった
緊急事態なのですね、消防車の放水ではどうにもならない大火災を海面に突っ込んで胴体に
海水を充満した消火用の飛行機がやって来て一気に消し止めてしまうイメージでしょうか、こう
いうイザという時に必要な存在を常に求めている世の中というのはあまり健全な社会とは言え
ないと思います。国政を担う人達には、生きるか死ぬかの賭けで大手術をしてガンを摘出する
一人の名医を期待するよりも予防と早期発見の広域医療体制を整備する方向に日本をリード
してもらうのが本来のあるべき姿だと思います。要するに、ヒーローは真に人々が追い詰められ
た時に何処からともなく現れて、事件が解決したら人知れず去っていく宿命なのですね。決して
日常とは両立し得ない特別な存在なのです。ただ、そんな彼であってもアンヌ(女性)は愛して
しまうのです!そしてその愛を貫こうとするのですね。これはどちらの立場も正解だろうと思い
ます、男(多くの場合ヒーロー?になる)は基本的に根無し草でフラフラと世界をさまよう存在で
女性は大地に根を張ってやって来る男を捉まえる!訳ですね(笑)まあ少し極端な言い方です
が男の代わりは幾らでもいるので女性の方がより良い(よりマシな!)男を選ぶのです。それで
親の世代より優秀な子孫が生み出されていく訳で、やって来たのが宇宙人であろうとヒーロー
であろうと女性の側にすれば大した問題ではない!ということですね(これはあくまで私見です
ので女性のみなさん怒らないで下さいね)

さて、こうして最終回の脚本も完成しいよいよ仙台ロケの日程も決まります。アンヌは早速撮影
中の竜次に知らせに行ってマイケルへの伝言を頼みますがセブンの中の竜次は自分の横にい
るパンドン(最終回に登場する怪獣)を見やります。パンドンはアンヌを見てファイティングポーズ
を取り「かかってこい!」と英語でのたまいます(笑)「マイケル!」と小声で話しかけるアンヌ!
そうです、竜次さんが一計を案じてマイケルをパンドンの着ぐるみの中に入れて仙台まで連れて
行こうと考えたのでした。グッドアイデアに三人がうなずき合っている所へ不意に刑事を伴った
MP(エムピー=アメリカ軍内部の警察)がスタジオに踏み込んで来ました!あー、とうとうバレた
か!と身をすくめるアンヌ達ですが、一人の刑事がおもむろに1枚の写真を取り出しました。
そこには紛れもないマイケルが写っていたのですがアンヌは作り笑いでシラを切ります。どうも
直子さん達の組織が捜査線上に浮んだので刑事達はダンを目当てにやって来たようです。ダン
が隣のスタジオにいると聞くと彼らはスタスタと出て行きましたが周りのスタッフは異様な空気に
包まれます。それは直後に尋問を受けたダンのスタジオも同様で、満田監督はダンを連れて
企画室に向かいます。そこへ今度は別の監督に引っ立てられた(笑)アンヌもやって来ました。
「そっちにも来た?!」驚いている満田監督達の所へ金城さんも飛んで来ました「何?スタジオ
に本物の!刑事が来たんだって?」

さあ大変です!フィクションの世界がいきなり現実に引き戻されました。二人を問い詰める監督
達ですがもちろんそんなことでは口を割りません(笑)そこへ制作の熊谷さん(クマちゃん!)が
やって来ます「パンドンに外人が入ってる・・・」ってあなた制作担当でしょ?何で知らないの!と
突っ込みたくなりましたが(笑)一同は慌ててパンドンの捕獲!に向かいます。もうこうなっては
あっという間に真相がバレてマイケル脱出プロジェクトは崩壊の危機に陥ります。企画室には
重苦しい空気が立ち込めました。マイケルをMPに引き渡そうと言うスタッフに「そんなことしたら
アンヌは役を降りるって言ってるよ!」と吐き捨てる満田監督。座り込んだ金城さんは「沖縄で同
じことやったら確実に監獄行きだ、とても自分にはマネ出来ない」と茫然自失です「アメリカ軍と
戦おうなんて、ドラマより面白いことされたらたまらない」と満田監督もお手上げ状態です(笑)
結局はこっそりとマイケルパンドン!をロケ隊に紛れ込ませて仙台に連れて行くことになりました
やっぱりアンヌの度胸には男連中も形無しだった訳です(笑)数日後、ロケ隊は仙台に出発しま
したがその後をピッタリと付いて来る車がありました。そうです、警察は甘くなかったのですね。

一方、金城さんはロケには参加せず円谷プロに居残りです。そりゃそうですね、脚本家が撮影
にまでは顔を出さないですしセブンという最後の?ウルトラシリーズに区切りをつけて金城さん
としてはウルトラQ以来の肩の荷を漸く降ろせたという心境でしょうか(実際の金城さんは視聴
率を挽回出来なかったセブンに責任を感じて以降2作に関わっていくのですが事態はますます
悪くなって文芸部としての責任を問われるようになっていったのでした)
雨の中、傘もささないで鞄一つで円谷プロを後にしようとする金城さん、とそこへ円谷英二さん
(おやじさん!)がこれまた傘無しで帰って来ました。
「金ちゃん、旅行かい?」
「はい、ちょっと沖縄まで」この頃はまだ沖縄へはパスポートを持って出入りしなければいけない
時代でした、ちょっと行って帰ってくるという旅行ではありません。おやじさんは心配気に金城
さんを見ます。
「金ちゃん、早く戻ってきてくれよ。またいっしょに次回作をやろう」
生返事の金城さんの左腕に時計が無いのを気づいたおやじさんは自分の時計を外します。
「何だ、旅行するのに時計無しか」
「質に入れて流しちゃいました(笑)」
「しょうのない奴だ、貸してやる」
金城さんは遠慮して受け取りません(実はこの前に上原さんへの餞別として自分の時計を置い
てきたのでした)
「遠慮せずに早くはめなさい」
「悪いなぁ、こんな親父みたいなことしてもらって」
「おれはいつだって金ちゃんを本当の息子だと思ってるよ」
金城さんの様子を察したおやじさんからの手向けの言葉でした。

そして、この会話が二人の永遠の別れとなったのでした。

実際に金城さんが東京を去った翌年の1970年、円谷英二さんは波乱に満ちた68年の生涯を
閉じられました。日本のみならず世界の映画界、放送界に残された功績は計り知れないものが
ありました。そして沖縄からおやじさんの葬儀に駆けつけて円谷プロ関係者の代表として弔辞を
読んだ金城さんも、3年後のおやじさんのご長男で兄とも慕っていた円谷一(つぶらやはじめ)
さんの死去の後を追うようにその3年後の1976年に帰らぬ人となりました。ウルトラシリーズを
創り出し日本の特撮ドラマ界を支えた三つの巨星が3年毎に相次いで消えたのです。この影響
は言葉で言い尽くせません、業界はもちろん日本中の幾多の人々に衝撃を与えた悲劇でした。

さて、仙台に向かったロケ隊は丘の向こうに警察の車が停まっているのを意識しながら撮影を
進めていきます。とは言っても事情を知ってるのは満田監督と熊ちゃん、あとは共犯?の四人
だけなのですが(笑)マイケルパンドンがマークされていると感じた竜次さんはまたひらめきます
撮影はいよいよクライマックスへパンドンとウルトラ警備隊の格闘に入りました!ってそんなシー
ンありませんよ監督!?そんな声にはお構いなしにメガホンで怒鳴る満田監督!そこへポイン
ター(ウルトラ警備隊の専用車=レーザー砲、ミサイル装備で空も飛ぶ!正にスーパーカーでし
た・笑)を疾走させてアンヌがやって来ます!満田監督が叫びました「ダン!セブンをポインター
に乗せてゆめのうらまで突っ走れ!」監督!脚本と違います!「脚本変更!」監督は澄ました
ものです。一瞬にして事態を悟ったダンは傍らのセブンをポインターに押し込んでロケ現場から
走り去ります。さあ、マイケルプロジェクトもラストステージに突入しました!車はどんどんスピー
ドを上げます、あと30分も走ればゆめのうら港です。

一方、パンドンとの格闘で疲れ果てた隊員達は完全にグロッキーでした「監督、我々がパンドン
やっつけちゃったらセブンのやることが?」満田監督がニヤリと笑ってパンドンを見やると着ぐる
みの中から出てきたのは何と竜次さんではないですか!「竜次が入ってたのか、じゃあセブン
には?」隊員達があっけに取られている頃、ポインターは港に到着しましたが、何と既に警察の
非常線!が張られていました「しまった!」ということで慌てて脇道に入りますが狭い田舎の道
です、あっという間にパトカーに取り囲まれてどうにも身動きが取れなくなりました。
港の突堤に追い詰められたポインターのドアが静かに開いてセブンが降り立ちました。ゆっくりと
海の方へ歩いて行くヒーロー、後ろからはダンとアンヌが続きます。
セブンは着ぐるみを脱ぎました。
「マイケル、こんなことになるなんて」もうアンヌは半泣きです。
「ここでセブンに変身出来ない自分が悔しいよ」ダンも拳を握り締めました。
マイケルは澄んだ瞳で海の彼方を見つめます。
「いつも夢に見ていた海だ。二人の勇気は忘れない、ありがとうアンヌ、ありがとうダン」
三人は固い握手を交わしました。
既に突堤の端には例のMPが待っていました、大人しく逮捕されるマイケル(やはりアメリカ人は
後ろ手錠・うしろてじょうをされるのですね、現在の日本では手錠に背広などを掛けたり報道でも
はっきり映さずモザイクが入りますが人権感覚の違いでしょうか?)ダンもいっしょに連れて行か
れて呆然とするアンヌです。

場面は切り替わり数時間後の宿泊先のホテルでしょうか、小さなラウンジのようなところに
警備隊の面々が座っています。ポロンポロンとギターを弾くアンヌ、セブンの主題歌を口ずさ
んでいます。勇ましい歌詞も空ろに響きますね。と、静かにドアが開いて一人の男が入って
来ました(「ダン!」)やにわに立ち上がって駆け寄るアンヌ!もう言葉も出ませんでした。
翌日、ウルトラセブンロケの最終日です。傷ついた体で宇宙に去って行くセブン、それを見送る
隊員達。早朝の高原には朝もやが立ち込めていました。

一行は東京に戻りラストシーンのスタジオ録りです、宇宙に飛んで行くセブンを見送るアンヌの
所へピアノ線に吊るされたセブンの人形が戻って来ました。何ともいえない表情でセブンを見つ
めるアンヌ、そこへ突然くす球が割れてクラッカー!の嵐が巻き起こりました。全撮影が終了、
ウルトラセブン無事にクランクアップです!各キャストはおやじさんや満田監督らスタッフから
花束をもらいそのまま大打ち上げパーティーへとなだれ込んでいきました(笑)スタジオの外で
は巨大なキャンプファイアー!が燃え盛り、全員が火を囲んで盆踊り?のような音頭で踊って
います(笑)あっ、アンヌが見つめる目線の先に何と金城さんも踊っているではありませんか!
(「帰って来たの!」)しかし、それは幻でした、いやそればかりかアンヌの周りの仲間達が光に
包まれて消えていきます!
「消えないで!」
しかし、アンヌの叫びは届きませんでした。

映画の撮影所のことを「夢工場」と言います、文字通りの夢を紡ぐ工場ですね。こうしてセブンの
夢は終わりを告げました。アンヌはまた体育大学に戻っていくとのことです。
「セブンの夢から覚めたんだ」
と言うダンの言葉に応えるアンヌ、
「ううん、ずっとセブンの夢を追いかけて行くの。今度は現実で」

翌朝、アンヌが撮影所を後にしていきます。
「さようなら、私の夢の仲間たち。さようなら、私のセブン」

主演の田村英里子さんは今やハリウッド女優ですね、この「私が愛したウルトラセブン」は
いちばん好きな作品だと言われています。元はアイドル出身ですが本当に良い女優さんに
なられたと思います。役者はこういう作品に巡り合えることがそれこそ夢なのですね、自分
の代表作を持てるということは幸せなことです。これは40年前のセブンに関わったひし美さん
も森次晃嗣(もりつぐこうじさん、ダン・セブン役)も、そして金城さんもきっと同じ気持ちだと思
います。そして、この作品に参加した全てのスタッフとテレビの前で!毎週声援を送っていた
私達視聴者(笑)にとっても忘れられない思い出です。

劇中のマイケルの話は市川さんの演出(フィクション)ですが、彼のような存在、一つの社会
の中で浮き上がる異邦人は得てして排除の対象になる少数者ですが世の中にはそういう
無数の名も無い力の弱い人達もいて、またそういう人達の存在を認めて受け入れていくのが
あるべき社会の姿なのだと思いますね。世界は長い時間を費やして(同時に大きな犠牲を払
って)それを実現してきました。最早世界には奴隷制も無くなりアメリカでは黒人の大統領が
誕生しました。私達は数多くの夢の作品に触れていくことで自分自身の夢を紡ぐ力を伸ばし、
育んでいきたいものですね。

さて、今回は若きクリエーター達の夢のお話をさせて頂きました。今の感覚からしたら分かり
にくい場面も多かったと思いますが彼らの物造りへの情熱を感じ取ってもらえたでしょうか?
次回は私の沖縄の3つ目のキーワード、1970年代に日本中の話題をさらった元祖アイドル
の南沙織さんについてお話させて頂きます。同時に私の沖縄探訪珍道中?もご紹介したい
と思いますのでよろしければ覗いてみて下さい。
それではまた。

メディアコード: TXP20030
☆☆☆☆☆  

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