【第1話】牧ヶ原先生(KMY) 創刊号~
その男は、高い身長にして、真っ黒の服に、銀色のネックレス、丸いめがねをかけていた。髪はそれほど伸びてはいなかったが、顔には常に笑顔を絶やしていなかった。
「今年からこの中学校で担任をすることになりました、牧ヶ原霧(まきかはらきり)と申します」
体育館の舞台先で、牧ヶ原先生は、深く頭を下げた。
「牧ヶ原先生には、早速ですが1年は組の担任をしてもらいます」
教壇に立った校長先生が、そう生徒たちに語りかけた。
一ノ谷中学校の1学期始業式を終え、教室に戻ってきた1年は組の生徒たちは、それぞれ明るい雰囲気で話し合っていた。中でも一番大きな話題は。
「牧ヶ原先生って、かわいく笑っていたよな」
一人の男子、前田渉(まえだあゆむ)が、川井芳雄(かわいよしお)にそう語りかける。
「そうだね」
窓の外を眺めていた川井は、後ろを振り向いて、にこっとうなずく。
その時、教室の引き戸が開き、牧ヶ原先生が入ってきたので、生徒たちはいっせいに、てきとうな席に座る。教壇に立った牧ヶ原先生は、にこっと生徒たちに言う。
「早速ですが、今年からこの学校の先生になった、牧ヶ原霧先生と申します」
そう名乗った牧ヶ原先生は、べこりと頭を下げる。
「では、全員そろっているか出席を取りますね」
牧ヶ原先生がそう言って、肩にさげていた黒いかばんを教壇の上に置き、そこから名簿を取り出してさっと目を通す。
「ほう・・・、この学校はいろは順ですか」
牧ヶ原先生がそう言うと、生徒たちはどよめく。
「いろは順って・・・、もしかして。」
教室の真ん中近くの席を取った羽生かおるが、手を上げる。
「もしかして、出席番号がいろは順ってことですか?」
「はい、そうです」
牧ヶ原先生はにっこりとそう答え、そしてこう付け加える。
「今時珍しいですね。では、出席を取ります」
牧ヶ原先生は、教壇の上に出席簿を広げる。
「男子16名、女子15名、合計31人・・・名前を呼びますので、返事をしてください。1番、一条明美さん」
「はい」
「2番、朗明佐美子さん」
「はい」
「3番、花田土竜さん」
「はあい」
「4番、羽生かおるさん」
「はい。」
「5番、長谷川玲子さん」
「はい」
「6番、二十六木卞(とどろきべん)さん」
「はい」
「7番、千葉芽衣さん・・・8番、竜造寺猛(たける)さん・・・・・・・・・・・・31番、住田孝時さん」
「はい」
「全員出席ですね」
牧ヶ原先生はそう言い、出席簿を閉じる。
「それでは、教科書を配ります。教科書は図書室にあるようですので、誰かまとめて取りに行ってくれるかな・・・16番の奈良さん、国語をお願いします」
「はい」
奈良が立ち上がる。
「ところで、図書室はどこにあるのでしょうか」
奈良がそう尋ねると、牧ヶ原先生は首を横に振る。
「すみません、私にも分かりません。ちょっと聞いてきます。待ってください」
奈良が座ると、牧ヶ原先生は教室を出る。引き戸が閉まると、窓側の席の朝風まき(あさゆうまき)が、後ろの沼前に声をかける。
「ねえ、男の子も女の子も、みんなさんってつけていたでしょ?」
朝風の明るい声に対し、沼前はびくっとしたような気弱い返事をする。
「は・・・はい、そうですね」
「さあ、みんなも!」
朝風はびょんと立ち上がり、そこにいた田口剛司(つよし)に大きな声をかける。
「よろしく!」
朝風は明るい顔をするが、田口はすかさず朝風の制服のスカートをめくる。
「白」
「え・・・・・・」
朝風は固まった。スカートがふわりと降りてくると、田口の隣の羽生が田口の肩をつかんでどなる。
「いきなり、何をするのよ!」
「だって、下着が好きで」
田口がそう言うと、教室中の女子はざわっと、おびえた顔をする。
「別にいいでしょうか、それくらい!」
田口がかばっと立ち上がると、その後ろの子、黒澤歩美が、田口の肩をぼんと叩く。
「呪うわよ」
その声は奇妙に重々しく、後ろからどす黒いオーラを感じた田口は、急に顔を真っ白にする。
「忘れたとは言わせない・・・あのときの屈辱を・・・・・・」
黒澤は、手に持っていたわら人形を、田口のほっぺにすりつける。
「ひ・・・ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「静粛に。」
羽生は立ち上がり、じろっと二人を見る。
「隣の教室に、聞こえてくるでしょう。」
「ご・・・ごめんなさい」
田口はべこりと頭を下げる。羽生は、ため息をつく。
「まったく・・・・・・あああああ~~っ!!」
羽生がいきなり叫んだので、田口はびくっとする。羽生は、田口の後ろ、窓のほうを指差して、叫ぶ。
「そこ!何やってるの!」
窓を開けた千葉芽衣が、今、飛び降りようと、足を窓の桟に乗せて、下を見下ろしていた。千葉は、左手と右足に包帯を巻いていた。
「何をやってるの!」
羽生の問いに、千葉はゆっくりと振り向く。
「鳥になりたくて」
「はぁ?」
羽生は、目を点にする。
「だからといって、飛び降りていい理由にはなりません!死にます!今すぐ引き返してください!」
そんな羽生のすそを、くいくい引っ張る。
「うるさい」
長谷川玲子は、ぼそりとそう言う。羽生は、斜め下を見る。
「ああ・・・玲ちゃん」
長谷川は、手に本を持っていた。
「ぎゃああああああああ」
窓辺から悲鳴が上がったので、羽生はびくっとしてそこを振り向く。そこに立っている千葉の影が、消えていた。
「な・・・・・・」
羽生たちは、窓から下をのぞく。運動場の隅に、あおむけになっている千葉がいた。羽生は、頭を抱えてため息をつく。
「はぁ~・・・・・・」
「どうしました?」
教室に戻ってきた牧ヶ原先生が、声をかける。
「女の子が、ここから飛び降りたんです」
一人の男子、零時治が先生に答える。
「はい?」
牧ヶ原先生は、冷静な足とりで窓辺へ行って、下をのぞきこむ。
「これは・・・一事ですね」
牧ヶ原先生は、冷静な声でそう言い、教壇に戻る。
「さあさあ、皆さん、落ち着いて席に戻ってください」
生徒たちは、不安げな足とりでそれぞれの席に戻る。
「救急車には私から連絡しておきますね。やれやれ・・・」
牧ヶ原先生は、再び教室を出る。生徒たちは、今度ばかりは静かになっていた。
川井は、電気がついていず薄暗い、せまめの生徒指導室の真ん中にある白いテーブルの、向かい合っている2つのいすのうちの1つに座っていた。かちゃりとドアが開く。
「ああ」
川井は、立ち上がる。
「いきなりこんな場所に呼び出してきて・・・、何があったのでしょうか?千葉さんの件?」
生徒指導室に入ってきた人は、左手を背中に隠していた。ゆっくりとドアを閉め、そして、隠していた左手をゆっくりと見せる。その手には、ナイフが握られていた。
「な・・・・・・」
川井は、顔を真っ青にする。
「10番、川井芳雄さん」
その影は、不気味な笑みを顔に浮かべる。
「う・・・うわあああああああああ・・・助けて!!!」
「グググ・・・」
その人影は、ナイフで、真っ青になっている川井の腹をざくっと刺す―――・・。
~To be continued!!
続きはフィロス45号へ。
「今年からこの中学校で担任をすることになりました、牧ヶ原霧(まきかはらきり)と申します」
体育館の舞台先で、牧ヶ原先生は、深く頭を下げた。
「牧ヶ原先生には、早速ですが1年は組の担任をしてもらいます」
教壇に立った校長先生が、そう生徒たちに語りかけた。
一ノ谷中学校の1学期始業式を終え、教室に戻ってきた1年は組の生徒たちは、それぞれ明るい雰囲気で話し合っていた。中でも一番大きな話題は。
「牧ヶ原先生って、かわいく笑っていたよな」
一人の男子、前田渉(まえだあゆむ)が、川井芳雄(かわいよしお)にそう語りかける。
「そうだね」
窓の外を眺めていた川井は、後ろを振り向いて、にこっとうなずく。
その時、教室の引き戸が開き、牧ヶ原先生が入ってきたので、生徒たちはいっせいに、てきとうな席に座る。教壇に立った牧ヶ原先生は、にこっと生徒たちに言う。
「早速ですが、今年からこの学校の先生になった、牧ヶ原霧先生と申します」
そう名乗った牧ヶ原先生は、べこりと頭を下げる。
「では、全員そろっているか出席を取りますね」
牧ヶ原先生がそう言って、肩にさげていた黒いかばんを教壇の上に置き、そこから名簿を取り出してさっと目を通す。
「ほう・・・、この学校はいろは順ですか」
牧ヶ原先生がそう言うと、生徒たちはどよめく。
「いろは順って・・・、もしかして。」
教室の真ん中近くの席を取った羽生かおるが、手を上げる。
「もしかして、出席番号がいろは順ってことですか?」
「はい、そうです」
牧ヶ原先生はにっこりとそう答え、そしてこう付け加える。
「今時珍しいですね。では、出席を取ります」
牧ヶ原先生は、教壇の上に出席簿を広げる。
「男子16名、女子15名、合計31人・・・名前を呼びますので、返事をしてください。1番、一条明美さん」
「はい」
「2番、朗明佐美子さん」
「はい」
「3番、花田土竜さん」
「はあい」
「4番、羽生かおるさん」
「はい。」
「5番、長谷川玲子さん」
「はい」
「6番、二十六木卞(とどろきべん)さん」
「はい」
「7番、千葉芽衣さん・・・8番、竜造寺猛(たける)さん・・・・・・・・・・・・31番、住田孝時さん」
「はい」
「全員出席ですね」
牧ヶ原先生はそう言い、出席簿を閉じる。
「それでは、教科書を配ります。教科書は図書室にあるようですので、誰かまとめて取りに行ってくれるかな・・・16番の奈良さん、国語をお願いします」
「はい」
奈良が立ち上がる。
「ところで、図書室はどこにあるのでしょうか」
奈良がそう尋ねると、牧ヶ原先生は首を横に振る。
「すみません、私にも分かりません。ちょっと聞いてきます。待ってください」
奈良が座ると、牧ヶ原先生は教室を出る。引き戸が閉まると、窓側の席の朝風まき(あさゆうまき)が、後ろの沼前に声をかける。
「ねえ、男の子も女の子も、みんなさんってつけていたでしょ?」
朝風の明るい声に対し、沼前はびくっとしたような気弱い返事をする。
「は・・・はい、そうですね」
「さあ、みんなも!」
朝風はびょんと立ち上がり、そこにいた田口剛司(つよし)に大きな声をかける。
「よろしく!」
朝風は明るい顔をするが、田口はすかさず朝風の制服のスカートをめくる。
「白」
「え・・・・・・」
朝風は固まった。スカートがふわりと降りてくると、田口の隣の羽生が田口の肩をつかんでどなる。
「いきなり、何をするのよ!」
「だって、下着が好きで」
田口がそう言うと、教室中の女子はざわっと、おびえた顔をする。
「別にいいでしょうか、それくらい!」
田口がかばっと立ち上がると、その後ろの子、黒澤歩美が、田口の肩をぼんと叩く。
「呪うわよ」
その声は奇妙に重々しく、後ろからどす黒いオーラを感じた田口は、急に顔を真っ白にする。
「忘れたとは言わせない・・・あのときの屈辱を・・・・・・」
黒澤は、手に持っていたわら人形を、田口のほっぺにすりつける。
「ひ・・・ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「静粛に。」
羽生は立ち上がり、じろっと二人を見る。
「隣の教室に、聞こえてくるでしょう。」
「ご・・・ごめんなさい」
田口はべこりと頭を下げる。羽生は、ため息をつく。
「まったく・・・・・・あああああ~~っ!!」
羽生がいきなり叫んだので、田口はびくっとする。羽生は、田口の後ろ、窓のほうを指差して、叫ぶ。
「そこ!何やってるの!」
窓を開けた千葉芽衣が、今、飛び降りようと、足を窓の桟に乗せて、下を見下ろしていた。千葉は、左手と右足に包帯を巻いていた。
「何をやってるの!」
羽生の問いに、千葉はゆっくりと振り向く。
「鳥になりたくて」
「はぁ?」
羽生は、目を点にする。
「だからといって、飛び降りていい理由にはなりません!死にます!今すぐ引き返してください!」
そんな羽生のすそを、くいくい引っ張る。
「うるさい」
長谷川玲子は、ぼそりとそう言う。羽生は、斜め下を見る。
「ああ・・・玲ちゃん」
長谷川は、手に本を持っていた。
「ぎゃああああああああ」
窓辺から悲鳴が上がったので、羽生はびくっとしてそこを振り向く。そこに立っている千葉の影が、消えていた。
「な・・・・・・」
羽生たちは、窓から下をのぞく。運動場の隅に、あおむけになっている千葉がいた。羽生は、頭を抱えてため息をつく。
「はぁ~・・・・・・」
「どうしました?」
教室に戻ってきた牧ヶ原先生が、声をかける。
「女の子が、ここから飛び降りたんです」
一人の男子、零時治が先生に答える。
「はい?」
牧ヶ原先生は、冷静な足とりで窓辺へ行って、下をのぞきこむ。
「これは・・・一事ですね」
牧ヶ原先生は、冷静な声でそう言い、教壇に戻る。
「さあさあ、皆さん、落ち着いて席に戻ってください」
生徒たちは、不安げな足とりでそれぞれの席に戻る。
「救急車には私から連絡しておきますね。やれやれ・・・」
牧ヶ原先生は、再び教室を出る。生徒たちは、今度ばかりは静かになっていた。
川井は、電気がついていず薄暗い、せまめの生徒指導室の真ん中にある白いテーブルの、向かい合っている2つのいすのうちの1つに座っていた。かちゃりとドアが開く。
「ああ」
川井は、立ち上がる。
「いきなりこんな場所に呼び出してきて・・・、何があったのでしょうか?千葉さんの件?」
生徒指導室に入ってきた人は、左手を背中に隠していた。ゆっくりとドアを閉め、そして、隠していた左手をゆっくりと見せる。その手には、ナイフが握られていた。
「な・・・・・・」
川井は、顔を真っ青にする。
「10番、川井芳雄さん」
その影は、不気味な笑みを顔に浮かべる。
「う・・・うわあああああああああ・・・助けて!!!」
「グググ・・・」
その人影は、ナイフで、真っ青になっている川井の腹をざくっと刺す―――・・。
~To be continued!!
続きはフィロス45号へ。

